小咄

小咄

くろねこ太郎の落書き部屋 小咄ページです

1月22日

 

 


【割烹 春一】

 

 

白「ガマの油?」へー。


テオドール「飛天さんのおられるこの町で 
んな物売るのは無謀な気が」

粋「Σ飛天は診療所に行かねえと居ねえだろ!
ガマの油は自宅に置いとけるから 気軽に使えんの!」ううっ

 


白「確かに1家に1匹  飛天が居たら嫌すぎるな」

彬羽「嫌以前に その家が終わるだろ
あんなもん逆座敷童子「お前 何が有ったんだ。」

 

 

彬羽「・・空気読まん配慮読まん 専門分野特化の常識無しイトコに遊び相手認定されると地獄だぞ」ずーん。

朱禅「悲惨な子供時代だったのは解った」うん。

 


ひな「はいはいはい。
うちの板さん虐めないで下さいね

で、粋さん
何処からガマの油なんて仕入れたんです?」


粋「え?いや 仕入れたっつか
売るの頼まれただけだけど。」

ひな「はい?」

 


粋「何でもこう言うのは派手な方が良いって!
素人じゃ駄目だから是非って ガマ売りのおっちゃんに頼まれてさ!」きらきらっ

ひな「・・そうですか。」ああうん。

 


粋「まだ見習いだけど、やっぱこう 兄貴のアレコレ見て学べてんのかな!
そんで認めて貰えたのかなって 「ですねー。良かったですねえ」にこにこっ

 

 

朱禅(そんな派手なのが良いなら
普通は知名度も有る 兄貴の方に頼むよなあ) チラ見っ

 

 

テオドール「で、バイト代は以下程で?」

粋「ん?
こう言うのは金額とか細かい事は二の次だろ?」

 


ひな「完っ全にカモられてますよ?」ひそっ

白「あがり症だし
人前に慣れるのには 良いんじゃないのか

で、何処の奴だ そのガマ油屋
挨拶くらいしとかないとな。」

粋「いや要らなくね?
1日限りだし」えー。

 


テオドール「相変わらず変な所は 過保護な御方に御座います」ああうん

 

 


間。

 

 


粋「えーと。マニュアルによると

油売りの基本 まずは刀で紙をスパスパっ
これから使う刀の切れ味をお客さん等に見せつけると」 マニュアルふむふむっ

 


彬羽「店の隅で何ぞ始めたが
大丈夫かあいつ。」コソッ

テオドール「ここぞと言う所で 嫌なミスされる方故
むしろ マニュアルチェックは望ましいのでは?」こそっ

 

 

粋「ふむ、とにかく派手に紙切り刻めと。

兄貴のノリで スパパンッと切って そのままブワッと紙吹雪にしたら良さげじゃね?」ふむ。


テオドール「あ、なんやかんやで 兄上様の芸風をしっかり参考として生かしておられます。」おおっ

 


粋「でー。
刀が切れるの見せたら 
利き腕と反対に 清めの水を、じゃばじゃばかける?

ええー。この寒いのに」うわ

 

 

テオドール「清め?
何故に 腕に水を?」

彬羽「ガマの油ってのは傷の薬だ。

つまり怪我をして それをその場で治すと言うパフォーマンスが必要となるんだが」

テオドール「Σうえ! まさかその 紙をスパスパ切った刀で腕を!?」ひえっ

 


彬羽「安心しろ細工はしてある筈だ
あの手の刀は 刃先は潰してある。
そしてその刃先に仕掛けがしてあってな」

テオドール「えーと?」はて?


彬羽「つまり、紙を切るのは 刀の持ち手から八割くらいまで、
実際紙切れなんざ切るのに刃先は使わんだろ」

テオドール「Σ確かに!」おおっ


ひな「で、腕を切る真似は 仕掛け済みの刃先でえいやっ ですね。

中から赤い液体が出るのか、それとも事前に水をかけると言う事は 水に溶けやすい染料ですか?」


彬羽「どちらかだろうな
さすが良く知ってるな「前にそれで騙されて ガマの油買って失敗しましたから。」ふっ

 

 

彬羽・テオドール「・・・。」えーと。

 

 

 

白「で、血まみれに見える所にガマの油塗って 
拭って 怪我が治った!て皆に見せるのか?」

 

粋「そうそう。始めから怪我とかしてない

ってあれ?
コレってつまり

詐欺じゃね?」あれっ

 

 

朱禅「うん。速効性はねえけど
そこそこ効くから気にするなよそこは。」肩ぽんっ

 

 

ひな「前途多難ですねえ。」あらあらっ

白「やっぱこのバイト
断った方が良いと思うけどな」うーん。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

【市】

 

粋「さあさあ お立ちあい、御用とお急ぎでなかったら
どうぞゆっくりとーー」

 

通行人A「お?」

 


テオドール「おお。さすが叫び慣れてるだけ御座います
声が通るので 通行人の皆さん、1声で目を向けておりますよ」

白「だな。
上がらないと良いけどな」

 


粋「(うっお。一気にめちゃ振り向いた
やっべ緊張する

け、けど 兄貴とかいつもこんな物じゃねえだろしっ)

えー。取り出しましたるこちらの油」冷や汗っ

 

 

彬羽「ガマの油売りは 長い口上も芸の1つだった筈だが?」

白「長すぎて覚えられないから 要点だけ行くって言ってたぞ」


彬羽「・・・そうか。」あ
あうん。

テオドール「駄目で御座いましたら 私、1つくらい購入しようかと思っております
てか 彬羽さん、バイトの方は?」


彬羽「昼休みだ。」ちゃりっ

テオドール(あ。やはり小銭持ってきておられのですね。)

 

 


粋「えー 皆様テンプレ口上は聞き飽きろたし こっちも長いのは苦手って事で
色々とすっ飛ばしまして。

皆皆様。
こちらの刀を御覧下さい」しゃきんっ

 

通行人B「おー。正直で良いぞー」

奥さん「ガマの油ねえ
たまに見かけるけど 長くていつも最後まで見れないのよねえ」

 


テオドール「あれっ
まさかの 好評に御座いますか?」おおっ

 

 

粋「よっしゃ お客さん方ノリが良いんで、
いつもより多目に うりゃあ!!」半紙すぱぱんっ

紙吹雪ばばっ


通行人B「Σおおお!すっげえ切れ味っ」おおおおっ

 


白「刃物の扱い慣れてるしな」うん。

テオドール(あんな性格なので忘れがちで御座いますが
大概手練れの方で御座いましたね。) わお

 

 


粋「はいっ!て事で 切れ味は御覧の通りのこの名刀

あ、お嬢ちゃんちょい離れて
あー 嬢ちゃんは見ない方が良いかもなあ」

女の子「え?」

 


彬羽「ノリノリだな」

テオドール「思ってた数倍ウケておられますからねえ」ほうほうっ

 

粋「ではまず
清めの水を Σうお冷てっ」とぷとぷっ


通行人A「おい。兄ちゃん大丈夫かー?」わははっ

通行人B「ん?ガマの油って
うお この後大丈夫か あの兄ちゃん」ひええっ

 


粋「では 目ん玉ひんむいて 
よおく御覧下さい」

刀ちゃきっ。

 

白「ん?」あれっ

 

 

ぷすっ。

 


テオドール「あの、なんか固まられましたけど?」

 

 


粋(え? 嘘っ
なんでっ)冷や汗つうっ

 

通行人B「おい兄ちゃん やっぱやめた方が良かねえか?」おーい

粋「Σへ?あ!いやいや
思った数倍よく切れて ちょっとびっくりー!」わははははっ

 

 

彬羽「おい。アレはまさかっ」嫌な予感っ

白「うん。何かの手違いだな

ホントに先っちょ刺さってる」あちゃー。

 

粋(Σなんで!? 確かにバイト持ちかけてきた あのおっちゃん適当な感じだっけど!
えええ普通小道具間違える!? 

これ真剣じゃねえかよっ!!!)ひえええっ

 


テオドール「てか。リハなさってないので御座いますね」あーあ。

白「俺でも本番前にはやるのにな。」


彬羽「それも大概意外だが
プロとしちゃ当然か。

そしてあいつがイマイチ伸びねえのはその辺と」ああうん。

 

 


粋「うおお。いった!

あだだ思ったより痛かった

えー。こんな傷も このガマの油を塗れば あっと言う間に」塗り塗りっ


通行人A「おーい。さすがにショボいぞ」わははっ


粋「Σう!

いやこれはまだそのっ
小手調べ?的な?」冷や汗っ

 

テオドール「グッダグダになられておられますねえ」うーん。

彬羽「だな。
まあ 刀が本物じゃ続行のしようが無いしな」やれやれっ

 


粋「ほ!本番は此処から!!
さあさあ心臓の悪い人は下がって下がって 目をふさいで

下手すりゃモツが飛び出るぞ!!」やけくそっ

 

彬羽・テオドール「Σえ
゛」

 


白「まずいな 真剣使ってやる気だあいつ。

最後は 派手に血まみれ切腹からの ガマの油で回復とかって言ってたのに」


彬羽「Σいや台本に無理が有るだろ!!」

テオドール「Σ油で治るとか吹聴したら お侍から苦情来るのでは御座いませんか!?」ひええっ

 

 

粋(だだだ大丈夫!
薄皮1枚 薄皮1枚切る感じで!

内臓さえ無事なら結構平気って家康も言ってたし!!) ぷるぷるっ


奥さん「ちょっとあんた
汗凄いよ。
やめときなって」おろおろっ


粋「い、いやこれは
治ると解ってても痛いもんでっ
精神集中精神集中

はいはい。怖い人は目をつぶってー」顔面蒼白っ

 


彬羽(Σいやお前が1番怖いだろ!!)

テオドール「どどどどうするので御座いますか!?」

白「さすがにあいつでも
引けなくなって切腹はないと思うけど」うーん。


彬羽「いや あの馬鹿めちゃめちゃ流されやすいだろが

どうにかして 刀を偽物に取り替えられればっ」きょろっ

 


粋「(大丈夫大丈夫大丈夫!俺なら出来る!一応妖怪の血入ってんだし ちょっとくらいなら死なねえ死なねえっ

だってほら兄貴とか トチ狂って俺が腹に穴空けたけど・・・)

 

 

すんません!!腹切って詫びます!!」くわっ

野次馬一同「Σ!?」びくっ

 


白「錯乱してるな。」うわ

テオドール「どどどどういたしましょうっ」ひいいっ


彬羽「あの野郎 あの錯乱状態なら本気で行くぞおい!

仕方ない いつもの手前みたいに 何ぞ騒ぎを起こしてとんずら Σあ」はっ

 


粋(万一くたばったとしても 日頃の行いへの報いと思おう うん。

でもって 色々ガバガバだけど 引き受けたからには俺の仕事だ。
確認しなかったのも俺の責任

よし!運を天に任せてっ


ん? カラス 何やってんの?) あれっ

 

 

 

彬羽「通じただろうか」冷や汗っ

テオドール「あの。何で一生懸命で我が主を指差したり頭ペシペシしたり?

何のパントマイムで御座いますか?」怪訝っ

 

彬羽「いや解る奴には解るかとだな」

白「俺全然解らないぞ」困惑っ

 

 

通行人A「Σうおおお!行った」ひええっ


白・彬羽・テオドール「Σえ」

 

 


通行人B「ちょ!大丈夫かこれ!

ズップリ刺さってる!ズップリ!!」ひいっ

 

テオドール「Σだああ血迷われましたああ!!」うわああっ


白「ん。違う

あれって。」はっ

彬羽「通じたか」ほっ。

 

 

粋(ぬっわあああ!!
加減キツい!しんどい!つか 焼けた金属熱うっ!

成る程確かに 兄貴よく襲撃食らった時とか 相手の刀ドロッと溶かしてたそういや!!)

刃先じゅおおおっ

 

 

白「周りに火を見せない様にして 温度だけ上げてるのか」

彬羽「だな。
先の方だけなまくらにすりゃ 後は本来の偽物と大差ない」

テオドール「で、血はさっきの腕を切った血が床に垂れてる所に座り込んでると

お客さん方 錯乱してるので 流血が少ない事までは 気が回っておられないようで」ほっ。

 

 

一同(あの状況から
ガマの油 塗れるか?) あれっ?

 

粋(Σせめてもちょい 近くに置いとくべきだったあ!!)冷や汗どばっ

 

 

 


つつじ「おんや。これは大変どす。

あんさん大丈夫どすか?

ほれ、見してみい
こげな怪我 ガマの油でちやっちゃっと治りますえー。」ひょこっ

 

白「あ。何か生えた」

 

 


つつじ「おやおや。 偉い深々と刺してもて

あ。皆はん ちょいかかんで
うらっ!!」

びしゃあ!!


野次馬一同「Σぎゃああ!!」ひいいっ

 

テオドール「Σおお!さすが血糊持参に御座います!」おおおっ

 

 


つつじ「あーこらいかん

偉いザックリいってもて そら自力で塗れんわなあ
ほなちょい失礼」油べっちょべちょっ


奥さん「ひええええっ」腰抜かしっ

 

 

つつじ「いやー災難どしたなあ。

はい。そういうわけで

こちらがガマの油の効果どす。」ほいっ

粋「じゃーん!」やけくそっ


野次馬一同「Σおおお!すっげええええ!」拍手ぱちぱちぱち!!

 

 

 

つつじ「いやー 何おもろい事しとんのかと思ったら

休み暇して其処らウロついとって良かったわあ」ひそっ

粋「くっ
結局 芝居小屋ツートップには勝てねえっ」ううっ

 

つつじ「勝ててもたら わて等立つ瀬無いわ。

まあ度胸は大したもんどす

ほな後頑張りやー」すたすたっ

粋「Σえ ちょ」

 

奥さん「お兄さん!ガマの油 三つ程おくれっ」

通行人A「おいらも!
あ これ定期的にやんの?
そんならとりあえず1個で!」

通行人B「みみっちい事言うない!
兄ちゃん 五つほどくれや!!」ほれほれっ


お客わらわらごった返しっ

 

粋「Σだああ良心が痛む!!」ひええっ

 

 

彬羽「大盛況だな。
あれ見りゃ当然か」ふむ。

白「うん。今回は頑張った」

テオドール「Σうっお。素直に認められまして御座います!」ひええっ


白「で、バカラ
お前昼休み長くないか?」


彬羽「Σあ」しまったっ

 

 

 


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ーーーーーーー

 


皐月「なんやアンタ
人前で公演する練習してるらしいやん?しかもド偉い奴。

ガマの油はこっちで用意するから これから毎週、市で油売りやってえなー」ガマの油どんっ!!


粋「Σもう嫌だああ!!」ひええっ

 


つつじ「すんません。
うっかりペロッと皐月はんに喋ってもて」

白「うん。

お前 口軽すぎだぞ」あーあ。

 


テオドール「今度こそ本当にモツが出ちゃいそうに御座いますねえ」うわ。


皐月「嫌ってアンタ ええの?
あがり症治さんと 兄ちゃんみたいになるどころの話ちゃうで?」

粋「Σぐっ」

 


白「役者にハラキリ必要ないぞ」

テオドール「なんで 逐一ぐらついちゃうので御座いますかねえ」うーん。

 

 

 

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