小咄

小咄

くろねこ太郎の落書き部屋 小咄ページです

5月29日

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江戸城




魄哉「白君 すみませんが急ぎ京に向かって貰えませんか?」

白「名指しって事は妖怪絡みか」




小太郎「慣れてるなー」わんっ

白「今日休みだから良いけど。
あ、今からだと昼食べれないだろし おにぎり欲しい」

家康「はいはいはい。彬羽よろしくー」

彬羽「当たり前みたいに俺か。」



白「梅干し入れるなよ」

彬羽「防腐剤代わりだ。ワガママ抜かすな」 きっぱり


蒼月「何この遠足ノリ。」

千様「緊張感の欠片も無いわねー」



白「で、何をしに京の何処まで行けば良いんだ?」

魄哉「えーと。
当事者にお話聞いた方が早いですね」

小太郎「当事者?」


晴明「私だ。」どやあっ

白「昔封印した妖怪でも復活したのか?」おにぎりもぐもぐ。

晴明「Σおい話す前に言うでない!!」

彬羽「Σ弁当を今食うな馬鹿野郎!!」



蒼月「えー何? アンタ凄腕陰陽師なんじゃないの?
封印とかれちゃうって そんな有るの?」

晴明「あのな。滅したのでは無く封印ぞ?
滅し切れなかったり、滅する程の物でも無かったりする場合
いずれは解放されるの前提で使うものだ」

千様「で、今回のは?」


晴明「同情せなんだら良かった」ふかーいため息。

蒼月「うわヤバそう」わおー。



彬羽「で、勿体ぶるな。
何が出てきたってんだ?」

晴明「お前達 橋姫なる者を知っておるか?」


粋「あれ?確か演目で無かったっけ?」

白「んー。どれだろ」もぐもぐ。


千様「お仕事スイッチ入ってないと 自分の演じたのすら思い出せないのねー。」あらまあ



白「演じたっけ?いつだ?」はて。

粋「いや、つい最近なんだけど。」


彬羽「橋姫とは 有る公家の娘が嫉妬に駆られ生きたまま鬼となり 妬む相手やその周りを呪い殺して行く話だ

諸説有るが 被害者周辺が安倍晴明に相談した所、大江山鬼退治で有名な渡辺綱が退治に乗り出し 後の鬼切で退治したと言うもの。

安倍晴明自身が護りに徹した為手出しが出来ず 期を見て出直すと退散した等 言い伝えにも数パターン等がある

そして 手前が演じたのは綱にたたっ斬られる方だ!それくらい覚えとけ!!」くわっ


粋「ごめん。話長くて兄貴寝たわ。」

千様「てかその回 台本書いたの彬羽君だったのね」納得。



彬羽「起きろ馬鹿たれ さっさと京に行って来い!」

白「殴らなくても良いのに。」たんこぶ



家康「じゃあ、つまりその橋姫って子は
被害者が晴明さんに助け求めて それで渡辺綱さんが退治したって事? 」

魄哉「命までは取らないで封印したみたいですがね。」

晴明「嫉妬に狂ったのもな。
なんぞ男が妻帯者なの隠して騙くらかしておったのでな」

小太郎「Σげ。そっちのが被害者じゃないのか!?」ぎゃいんっ

晴明「であろう?
ゆえに 何百年か後に封印が解けた時 怒りが収まっておるのを願ったのだがのう。」



千様「甘いわね。女の恨みは時が経つと熟成されて悪化するのよー」うふふふふっ

魄哉「僕らはどんどこ忘れて行きますがねえ」うーん。

晴明「いいトシだからの」うむ。




シロ「しかしだ。現代に甦ったとて その呪いたい相手は既におらんだろう
いったい誰に危害を加えると言うのだ?」

晴明「言うたろう
トシをとると忘れるのだ」

シロ「ん?」


魄哉「長い間封じられて居てそれでも消えない恨みですよ?
恨みのみに取り憑かれ、誰を呪っているのか何に苦しんでいるのか解らなくなってる場合もあるんです」

晴明「封印から目覚めて 記憶から何からそのまんまなのはお前らの所の九尾くらいの物ぞ。」

小太郎「Σえ。九尾すっご!」おおっ


九尾(女中バージョン)「呼んだかえ?」ひょこっ

粋「Σホント何処にでも居るなストーカー狐!!」




石燕「つまり 誰を恨んでこの世に留まってるのか解らない悪霊みたいなもんすか?」にょきっ

魄哉「妖怪絡みだと生えてきますね。
そんな感じですねえ」





石燕「よし 白さん行きやしょう!
1人じゃ迷子になるっしょ!!あっしもお供するっす!」きりっ

白「お前橋姫描きたいだけだろ。」




粋「あのー 流れ的にその橋姫って今」

魄哉「平たく言えば結婚詐欺の恨みですからね。
男性前提で襲われ倒してます。」

シロ「Σおい石燕やめろ!お前は行くな!!」ひいいっ




晴明「調度良い。京まであ奴等を乗せて行って貰えんか?」

九尾「お?だーりんと都デートかえ!」おおおっ


千様「あ。なんか大丈夫そう。」


シロ「俺も行くべきか?」妖刀鬼切っ。

粋「あー。鬼切の所有者だもんな 斬らないで済んだら良いけどなあ」うーん。





ーーーーーーーーーーー




【京の都 宇治の橋】





雨の後の濁流ごうごうっ



白「川だなんて聞いてないぞ。」くわっ

彬羽「橋姫の名前で察しろ」きっぱり。


粋「まさかこの中入るんじゃないよな?」冷や汗っ



白「・・・・・」じーっ

粋「Σえ。ちょ兄貴 ひょっとして突き落とそうとしてる!?」ひいいっ



九尾(町娘バージョン)「カナヅチはつらいのー」

石燕(与一)「辛いのは弟の方だがな。」

九尾「あれ?なんじゃいお前 中身変わったのか?」

石燕(与一)「万一に備えてな
石燕では自分の身も護れんのでな。
私が見た物もあやつの見た物になるので何も問題は無い。」弓磨ききゅっきゅっ


シロ「町のど真ん中で武器の手入れするのは問題有るぞ」




粋「てかよ。晴明連れて来るべきだったよなー
来たは良いけど その橋姫何処に居るんだよ」きょろっ

彬羽「何の気配も感じないな。」ふむ

九尾「だーりん 水怖いなら離れておって良「全然怖くない。」

石燕(与一)「最大の戦力が弱体化しておるではないか。

ちと待て。石燕の目で見てみれば いやこれだけの水量だと何が何だか解らんな」むう。



九尾「居場所さえ解れば取っ捕まえてびんびんに泣かして 爛れた過去は忘れ新しい彼氏見つけろと説教してやるんだがのー」

粋「お前が言うと説得力凄いな」うわあ。

九尾「わちも昔はやんちゃしておったが 今は愛に生きておるもーん。
ね?だーりん?」きゃっ



彬羽「聞いてる余裕無さそうだが?」

白「海まで全部蒸発させれば水なんて無くな「Σおい!えげつない策考じとるぞ!!」


シロ「ふむ。相手が出てこぬ事には何も出来ん。
彬羽、台本を書く際に資料漁ったであろう?
何か無かったか?」

彬羽「いやこれと言って いや、待てよ。」

粋「お?何か有る?」


彬羽「橋姫は嫉妬で鬼になった女だ

確か それゆえに嫉妬をテーマにした『葵の上』や『野宮』などの謡曲を橋の上で歌うと怒り狂って出てくるとか
シロ「誰が歌えるのだそんな物。」


粋「あのー。謡曲って何?」

彬羽「能の中に出てくる曲だな」

石燕(与一)「お前は知っとるのか?」




彬羽「・・・・・・・・いや?」目そらしっ

石燕(与一)「Σ絶体歌いたく無いだけだろお前!!」

シロ「言ってやるな! 人前で何かを披露するのが苦手な奴なのだ!
正月に無理矢理歌わされた時も緊張で声裏返って散々な「Σそれ以上言うなあああ!!」





白「葵の上 えっと

与一、弓でいいや。べいんべいん弦鳴らせ」

石燕(与一)「Σへ?」


扇子すちゃっ


白「天清浄 地清浄 内外清浄、六根清浄ー 三つの車に法の道 火宅の門をや出でぬらんーー」

一同(Σなんか始まったーーっ!!!)



粋「Σえ、まさかの暗記してる!?」

彬羽「興味さえ持たせれば 丸暗記くらいは出来るみたいだな。なかなか興味持たねえが」うん。

粋「Σマジか!!」


シロ「そう言えば 本当に本当のトップクラスのプロの役者であったな。」冷や汗っ

九尾「きゃー 本気モードのだーりん素敵じゃー」きゃーきゃー

石燕(与一)(水が怖すぎて仕事モードに逃げたのか。)納得。




白「ーーのわが姿 月をば眺めあかすとも 月には見へじかげろうのー 」 きりっ


野次馬ざわざわわらわらっ




石燕(与一)「Σおい!まずいぞ これで本当に橋姫が出てきたらっ」

彬羽「路上でこんなのおっ始めりゃそりゃあ野次馬も来るだろ。」

石燕(与一)「Σ何故にそげに落ち着いとるのだ!!」



九尾「Σむ。殺気!」ぴくっ

シロ「Σうお。本気で来よったか!!」鬼切構えっ



ざぱーーっ!!

一同「Σでかあああ!!!」ひいいっ






白「」ギロッ。

橋姫「Σ!?」びくうっ!





粋「直訳すると。上演中は静かに。 だと思う」うん。

シロ「戦わずして気迫で負けたな 橋姫。」刀仕舞いっ



彬羽「な? 演じてる時は集中力半端ねえから 邪魔したら焦げるぞ。」

石燕(与一)「Σ何しに来たんだあやつは!」

彬羽「封印されてなくても何しに来たか忘れんだろ。うちの大将はよ」ため息。





九尾「えーと。演目終わったら御話し中しような?」しーっ

橋姫「」こくこく頷きっ





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