小咄

小咄

くろねこ太郎の落書き部屋 小咄ページです

12月15日

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【芝居小屋】



石燕「ちいーす お稽古どうっすか?」ひょこっ

皐月「あれ?珍しい人が来たなあ」

石燕「年末はいつもより多目に関係者以外立入禁止っしょ?
納品のついでに差し入れの菓子届けに来ただけっすよ」へらっ



皐月「よし。のれんに年末年始のめでたい絵描いてくれへん?」くわっ

石燕「Σまたいきなり まいどっす!!」おおっ



粋「猛ってんなあ」うわあ。

つつじ「ああやってちゃきちゃき動いて貰えるから わてらも仕事しやすいんやけんどな」苦笑。


テオドール「あれ?石燕さん 」ひょこっ

石燕「あ、すんません ちょい仕事入ったんでお邪魔しやす」

テオドール「へ、はあ」きょとん


皐月「はいはいはい雑用はこっちよろしく!
ウチは大掃除出来へんからなー」雑巾と桶どんっ

テオドール「Σ重っ!!」ずしいいっ



粋「相変わらず馬力すげー」うわあ。





白「ん?誰か来たのか?」ずーるずるっ

粋「Σこら兄貴着付け途中で出てこない!!」

白「後何枚だ めんどくさい」むう


石燕「すんません。お邪魔してるっすよ」袖まくりっ

白「ん?いや石燕じゃない」

粋「へ?」





呉服屋「すみませーん。 ご注文の品 お届けに参りました」ひょこっ

皐月「あ、どうもー」てててっ



テオドール「相変わらず耳がお良ろしゅう御座いますねえ」へー。

粋「あれ?兄貴?おーい」


皐月「どしたんアンタ

ん?」

呉服屋の娘「Σあ」びくっ


皐月「ありゃ娘さん?」

呉服屋「バレましたか 申し訳有りません
娘が役者さん達を生で見たいとゴネるもので
大人しくしてれば良いと根負けしてしまいまして」苦笑。

皐月「んー。 関係者以外はアカンけど、お父はんのお手伝いに来たんやったらエエんちゃうかな
お嬢ちゃん残念やな そんな珍しいもんでもないでー」あははっ


つつじ「わてら珍しないらしいわ」へー。

粋「拗ねんなよ」


呉服屋「ではこの辺で失礼します。 お邪魔をしてしまい申し訳ありませんでした」ぺこり



テオドール「おや。お可愛らしいですね 手を振られておられま
Σあの!?そんな子供ダメなので御座いますかっ?」びくっ

白「ん?」

粋「いや兄貴 怖い怖い
表情薄いから良かったけど 今の子別に騒いで無いだろ?」


白「いや違う違う
気になったのは子供じゃなくて」

石燕「あーありゃ確かにヤバイっすねえ」ふむ。


粋「Σえ?石燕が言うってなると」はっ





白「あのチビの周りに 変な色のモヤが見えた」むう。

石燕「あっしには ものごっつい量の糸が絡み付いてるみたいに見えたっすねえ」

粋「Σどっちにしてもヤベえええ!!」ひいいっ


テオドール「糸?蜘蛛の類に御座いますか?」

石燕「いやアレは どっちかと言うと裁縫糸みたいな?」

粋「え、兄貴 これって」おろおろっ

白「化け物絡みだろうな」うん。

テオドール「Σあの小さいお嬢さん大丈夫なので御座いますか!?」えええっ




石燕「ヒトは嫌いっすが 子供に罪は無いっすしねえ。
しかし 今お仕事入った所っすし
そちらでお願いしやす」きっぱり。

白「お前ホントに人間には冷たいな」むう。

石燕「化け物の悪さ取り締まるのも白さん達の仕事っしょ?がんばっすよー」下書きさらさらっ




皐月「言っとくけど アンタは今日抜けられへんからな?」ギロッ

白「よし。お前行け」びしっ

粋「Σ俺糸すら見えて無いんですけど!?」ひいいっ

白「よしテオ 手伝ってやれ」

粋「Σうおお難易度更にアップ!!」ひいいっ

テオドール「泣いてよろしいですか?」







間。







粋「で、兄貴の指示どおり来たけどさ」

テオドール「? ここは?」はて。




粋「妓楼。」目そらしっ

テオドール「さすがにどういう所かは大体知っております 御安心を。」


粋「そりゃ良かったけど
此処でどうすりゃ良いんだか」うーん。

テオドール「何も聞いておられないので?」

粋「行きゃ解るとか言われたけど 何をどうしたら」きょろっ






廓の女A「あら珍しい外人さん?」

廓の女B「あらー 日本は初めて?ちょっと寄ってかない?」

テオドール「Σうわああああ!!」じたばたっ


粋「Σなんで秒で捕まるかなあっ!?」ひいいっ


廓の女A「あら?お連れさん?
どう寄ってかない?」

粋「コイツ未成年だからダメ!!
でもって俺金持ってないから!」きっぱり

廓の女B「えー。何しに来たのよー」ええー。


テオドール(この人がコミュ力の化け物で良かったっ)ぜーぜー。





間。




廓の女A「って事で

このお客さん 小さい女の子にかけられてる呪い解けって言われて来たんだって
姐さん何か知らない?」

廓の女C「えー。ここで呪われるのは男だろ?」



テオドール(Σ何故にお座敷でお話聞いて貰ってるので御座いますか!?)ひいいっ

廓の女C「あー大丈夫大丈夫。
持ってなさそうだし金取らないから
てか 色々しきたりとか厳しいのはもっと上の店だよ 気楽にしな。」キセルすぱーっ

テオドール「さ、左様で」びくびくっ




廓の女C「ま、逃げ出そうとでもしなきゃ アタシ等も命までは取られんわ」しれっ
テオドール「」

粋(やっぱコイツには理解不能だったか)うーん。


廓の女A「あのねえ 人の住み家でんなガチガチだと失礼だよ?
こちとら此処で逞しく生きてんだから」むー。

テオドール「Σあっ これは申し訳御座いませんっ!」

廓の女B「あら素直」よしよし。



廓の女C「しかしそういう怪談系はねえ ホントに有るのかね

あの人なら知ってそうだけど」うーん。

粋「あの人って?」



廓の女C「アンタ 地獄太夫って知ってる?」



地獄太夫「おや。珍しい所で珍しいお人に」あらまっ

テオドール「Σ何故に此処におられるのですか!?」えええっ


廓の女C「あ、噂をすれば影だ」あははっ


地獄太夫「あちきはこの人等の大先輩にありんすから
ちょくちょく愚痴聞きに来とるんでござんすよ」

粋「いやあの 意味は解るんだけどその」えええっ


テオドール(この方 幽霊に御座いますよね!?)

地獄太夫「バレなきゃオールオッケーにありんす」ふっ

廓の女B「けど姐さんって何処のお店の人なの?
此処等じゃないよね? てか地獄ってどんな趣味よ」

地獄太夫「いわゆる一部の御人のみ知ってる系のお店にござんすよ」ほほほっ

廓の女A「あーまあそんなのも有るよね」うんうん


粋「適応力すっげー」わお。



地獄太夫「で、何しに来なんした?

必要と有らばよい子を紹介「Σいや違うから!! 頼まれ事頼まれ事!!」



テオドール「あれ?
ひょっとして 廓に行けと言うのは地獄太夫さんに聞けと言う話だったとか?」おや。

粋「Σそういう事かよ! なんでハッキリ言わないかな!?」だあもうっ


地獄太夫「つまりは主さんにまた遊ばれなんしたか
奥で話聞きなんしょ」あーあ。





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地獄太夫の部屋】




テオドール「えーと。つまり
糸に見えたのは強すぎる怨念情念と?」

粋「で、あの呉服屋のおっちゃん
真面目そうに見えて 女からそれだけの恨みを買ってると?」えー。


地獄太夫「さいざんす。
主さんも此処で似たようなの沢山見ておられるんで ピーンと来なさりなさった。と言う所にござんすか」

粋・テオドール「Σさらっと暴露!!」


地獄太夫「?
言っときますが あの御人は遊びにではござんせよ?
この手の所は情報も魔の物も集まりやすいのでありんす。そちらでちょくちょく来なさりんすが

むしろ誰が声かけても全く遊んでくりんせんわ」けっ

粋「あ、うん だろうな」心臓ばくばくっ

地獄太夫「いい加減お兄さん離れしなんし」 きっぱり

テオドール「え、えーと
それでその 娘さんに怨みドロドロとなるとつまり」

地獄太夫「妻子を捨てて一緒になるよ的な戯れ言を 本気にした子が居るんでありんしょうなあ」はーやれやれ。

粋「石燕が乗り気じゃなかった理由その辺か」うっわー。


テオドール「はー それは娘さんもお気の毒に。
しかし それは人間サイドの問題では?」あれ?

粋「ん?言われて見れば
兄貴の管轄じゃねえよな?」あれ?


地獄太夫「まだまだ甘うござんすなあ
主さん等が年末にしなんさるお芝居 演目は何にござんすか?」

粋「Σあ。道成寺」はっ

地獄太夫「さいざんす。裏切られた恨みつらみは 女を化け物にする事もござんす
実際に形を成し始めた恨みを見て 同じ轍を踏みかねぬと判断されたんでござんしょうなあ」

テオドール「Σ大事なんじゃ御座いませんか!?」ひいっ


地獄太夫「ええ。 だからそうなる前に
その恨み チョキンと切ってお仕舞いに致しましょ」

粋・テオドール「へ?」



地獄太夫「そこまでとなると もはや人では有りますまい
話し合いで解決するのは無理という物。 納得させるのは 縁ぶったぎって頭冷やさせてからでも良うござんしょ」

粋「いやどうやって。」ええー

テオドール「ぶったぎるって 第三者がやって良いので御座いますか?」




地獄太夫「具体的な打開策も出さぬ癖に ほんに男さんは文句ばかりにござんすなあ?」
粋・テオドール「Σ申し訳御座いません!!」土下座っ


地獄太夫「まあようござんす。
此方を貸して差し上げましょ」引き出しすすっ



粋「Σえ!これって!?」えええっ

テオドール「? ご存じなので御座いますか?」はて。





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つつじ「はーい お嬢さんそのまんま
ホンマはうちの者にしかせえへんねんけどな
1年の汚れを落として気持ち良う年末迎えよかーっておまじないどすー

はい。そのまんまっ」

ハサミしゃきしゃきんっ


呉服屋の娘「Σあ、ありがとうございますっ」おおっ



皐月「さすがやな。」

石燕「さすが役者っすねえ よし、こっちも出来たっ」ふーやれやれっ





皐月「アンタらもおつかれー
お使いようやったやん」

粋「始めに説明欲しかった」ぐったり。
テオドール「要はハサミ受け取りに行けば良かったと」ドッと疲労



石燕「つーか アレ晴明さんが普通に小遣い稼ぎに売ってる奴っすよ?
悪縁を切る縁切りハサミ。前に白さんが遊んでて彬羽さんに怒られた奴っすよね?」

粋「Σやっぱアレかよ!!」

テオドール「Σ地獄太夫さんに借りてくる必要あったので御座いますか!?」えええっ


白「ん?お前 年上の派手な女好きだろ?
ずっと忙しいから息抜きさせてやろうと思ったのに」きょとん。

粋「Σ何その急な不器用な優しさ! 解りにくいっ!!」


皐月「アンタは完全にとばっちりやな。」

テオドール「・・社会勉強にはなりました。」

石燕「嫌な事は断っていいんすよ?」苦笑。



呉服屋「いやーすみません
贔屓にして頂いている上こんな」にこにこ。

粋・テオドール(Σシバいたろかこのカマトト親父!!)むかああっ!



白「あ、そうそう 1つ注文があったんだった」

呉服屋「はい?」



白「火遊びは程ほどにな? 悪い噂が立ったら商売に響くぞ?」耳打ちボソッ
呉服屋「Σ!?」ぎくううっ





呉服屋の娘「お父さんどうしたのー?」

呉服屋「え? あ、ちょっと特別な注文をね。
寒くなってきたし早く帰ろうか」すたこらっ





石燕「どさまぎで女の人とご主人の縁切ったっすね?」

白「どっち取るかバレバレだったからな。」ハサミしゃきしゃきっ

つつじ「うわ。元アサシンからスるかいな」



白「て、事で 化け物になっちゃった女の方は時間ある時愚痴くらい聞くぞ」

地獄太夫「はいな。相も変わらず力技ながら 毎度鮮やかにござんすなあ」くすくすどろんっ







粋「俺ってやっぱガキなのかな」真顔。

テオドール「常人があの方を基準にするのが間違いなのでは御座いませんかねえ。」うーん。





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