小咄

小咄

くろねこ太郎の落書き部屋 小咄ページです

10月14日

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【芝居小屋 楽屋(本日の営業は終了しました。)】




白「って事でだ
江戸城は 今から年末の準備らしい」茶菓子ぼりぼり


つつじ「いやわてらも年末クッソ忙しいからな?」

白「え?」



皐月「え。ってもう去年の忘れたん?」

白「何だっけ?」はて。

つつじ「スッキリ綺麗に忘れとるな
聞いたわてがアホやったわ。」うーん。




粋「去年って言えばアレだろ?
年末のお祭り騒ぎの時にここに強盗押し入ってきた奴。
ほら兄貴が高下駄で犯人の顎蹴り上げて 一味びんびんに泣かし

つつじ「流れ的にそれやと思うんか?」


皐月「ホンマごっつかったけどなあ。
お客さんら 一周回って楽しんどったし」あははっ

白「安全って解れば怖い事なんかないんだぞ」どやっ

つつじ「ちょいちょい物事の真理ちらつかせるのやめよか。

わてが言いたいのはや
年末はかき入れ時やから気張らなあかん。
更に言うと
はい。こちらが年末分の台本どす」

どすん。

白「分厚いな。」うわあ



つつじ「ちゃんと読み仮名入れてくれとうから安心しい
お客はんらには常に最高のもん御見せせなアカンけどな 今年の年末は台本も凝っとるし更に色々仕込んで行きますえ。
年越しそば食べたかったらお気張りやす」くわっ




粋「ん?ひょっとして この芝居小屋って経営ヤバイ?」

皐月「いんや。去年強盗のおかげで売り上げごっつい跳ね上がったから
頑張ったらもっと行けんとちゃう?ってなっとんねん」

粋「あいつ色々逞しいなあ」うわあ。


つつじ「後な

白はん そろそろまともな字書けるようになりはった?」

白「字?」




つつじ「それも忘れとんのかこんガキャあ」

白「Σ!」びくっ


皐月「仮にも魔王ビビらすなこら」


粋(言い様によっちゃ魔王なんだろけど。間違ってねえけど
最近兄貴 魔王だ悪魔だ凄い言われ様だよなあ)うーん。


白「字って何の話だっけ?」ひそっ

皐月「いや、私に聞くんか」

白「つつじ仕事絡むと怖いし。
なんだったっけ?一応元から書けるし」ひそひそ



つつじ「自分の芸名漢字で書けるようになったんかと聞いとるねん。
丸聞こえやで」


皐月「アンタのたいして画数多くないやろ。
頑張れば行けるんとちゃう?」

白「あれ?それなら前から書けてるぞ?」

皐月「へ?」



粋「Σあ、そう言う事か」


白「嘘じゃないぞ ほら。」

さらさらっ


白「な?」


皐月「なんや 踊っとるイトミミズの軍団か?」

つつじ「この人にはこれが日本語に見えとるらしいんよなあ」ため息。


白「むしろ何でお前ら読めないんだ。」むう。

粋「兄貴は感性が根っこから違うんだろうなあ」うーん。


皐月「あ、そっか。
知識ゼロで才能 てか感性だけで役者として成功してんのやし
何か普通とはちゃうんかな?」ふむ。



白「あれ?そう言うのって電波って言うんじゃないのか?」

つつじ「自分で言うな。
せやな 間違いなく電波やな」納得。


粋「えーと。つまり天才には変人が多いって事で
皐月「無理矢理良い様に言おうとしとらへん?」



白「で、なんで年末忙しいのから字がどうのこうのって話になるんだ?」

つつじ「ん?
あーそか。あんさん知らんか

年末イベントではなあ。 うちの役者らが実際舞台で使った衣装やら何やらも売られるんどす
こっちの売り上げものごっついんやでー」にっこにこ。

白「何か嫌だなそれ。」うわあ。


粋「うわー。コアなファン向けかよ。
芸能人あるあるだけどよ」


つつじ「せやで。
ちなみに 毎年デビューしたての新人はコレで自分の売れ残らんかで胃を痛めるんやで」

粋「Σうおお一人前になる前にプレッシャー!」ひいいっ

皐月「アンタの時は鳴り物入りでデビューさせる予定らしいから大丈夫やろ。
それよりはよ一人前になりい」


白「鳴り物?」

つつじ「あんさんの事や。
うちの1番手の弟や言うたら まあ初動は大丈夫やろ


初動はな。」ぼそっ

粋「やめろ。凄え不安になるから。」




白「で、 何でその中古品売りで字なんだ?」

粋「Σ俺の不安ガンスルー!?」

皐月「いつもの事やろ。」きっぱり


つつじ「ああそれなあ

やっぱサインの一個二個入ってた方が競りが激しくなるっちゅーか。なあ?」

粋「ちょい待て。競りって え?普通に販売してんじゃねえの?」

つつじ「資金は多い程 新年からのあれやこれやに金かけれるからなあ」ふっ



皐月「何や。オークションか
えげつない事しとるなあ」うわあ。

つつじ「何やろなあ 皆はん始めは純粋にこれ欲しわあって感じでノリノリなんやけんどな。
最終的にはそれは払えんの?って金額をや 12月の寒空の下脂汗垂らしながら提示してくんねん。

けど、ここまで来たら最早意地 競り落とさな損って感じで 更に他のお人が最高値出してーのループや」

粋「何だよその地獄。」うわあ。




白「何でそんなになるか解らないけど
俺らの仕事って人を不幸にしてないか?」

つつじ「Σだ、出すか出さへんかは自分で決めれるんやし! 何も悪い事しとらへんで!?」

皐月「今日は確信ゴリゴリ突いて来るな」

粋「つーか。後ろめたい気持ちは有ったのかよ。」



つつじ「しゃーないやん。世の中資本が基本なんやもん
一人の役者であると同時に この小屋のなんやかんやも任されとるし」どよーん。

皐月「あーはいはい。
確かに商売は上手いとは思うわ

つか 凹むくらいならやんな。やるなら自己責任て割り切りやー」


粋「皐月が一番男前じゃねえ?」




白「なあ、そのオークション?の参加者には 帰りに餅くらい参加賞で渡したらどうだろ?」

つつじ「Σおお!そら名案やな!!」おおおっ


粋「ファンって 餅も買えないくらい散財すんのか。」うわあ。

皐月「とりあえず質素でも正月は迎えられるやろうなあ」うん。





白「罪悪感を緩めるには ちょっといい事してプラスマイナス0って考えるのが良いって 家康が言ってたし。」

つつじ「Σネタバレせんといて!余計に罪悪感増すわ!!」ひいいっ



粋「Σまた変な事教えられてる!!」

皐月「最近魔王っぽいのって あのらりほー殿様のせいなんちゃう?」





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