小咄

小咄

くろねこ太郎の落書き部屋 小咄ページです

7月13日

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【芝居小屋】



皐月「おっ その衣装ええやん」


白「丈長すぎるけどな」

つつじ「まだ大体のイメージ合わせどす。
こっからちゃあんも仕立ててくれはるから気にせんでええんどすえ」にこにこ


粋「で?
これ何の衣装だよ
次の演目決まったっけ?」



白「客寄せパンダだ」

つつじ「こん人めっさ目立つからなあ
派手な格好させとったら そんだけで宣伝客寄せになるんどす。」ふっ



粋「あーうん。
道理でくっそ派手な」納得。

皐月「ええやん。そこらの御姫さんより華やかやでー」

白「なんか嫌だなそれ。」






粋「まあ何でも良いけどよ
兄貴が派手なのいつもの事 ん?」


つつじ「どないしたん?」




粋「すっげえデカイ虫!ん?虫!?
ほら モッコモコしてめちゃ可愛い何こいつ!!」 おおおおっ

つつじ「Σなんで蚕ーっ!?」ひいいっ




白「カイコ?」はて。

皐月「えーと。
アンタの着てるその派手な着物の糸作ってくれる虫や

絹に紛れて来たんやろか?」

つつじ「えー。それは有り得へんわ

絹糸作っとる所と呉服屋は別もんやし
この子らは お蚕様言うてごっつ大事にされとるはず。
何でこんな所おるんや」うーん。



粋「なあ。飼って良い?」きらきらっ

白「飼い方解るのか?」

粋「Σぐ!」



彬羽「残念ながら飼えねえな。」


皐月「お。あっきー 台本出来たん?」

彬羽「いや。夏なのに水テーマは絶対やめろって言われてるってのは本当か確認をしに来た。」



つつじ「白はん?」

白「だって 夏に水テーマだと池とか水だらけの仕掛け作るだろ
俺水嫌いだし」ふんっ

皐月(金槌やからやめてくれって正直に言えばエエのに。)


彬羽「やっぱりそうい言う事か」ため息。


粋「なあ。飼えねえって何?
犬猫ならともかく こんな虫もダメなのかよ」むう。



彬羽「そいつは既に成虫だろ
成虫のカイコには口が無い。

だから長くは生きられねえんだ。飼い様が無い。」

粋「Σは!? 口が無いって何それ!」


彬羽「そういう生き物だとしか言えねえな

なんでこんな進化したんだか。」うーん。


白「口が無いのに コイツ今までどうやって生きて来たんだ?」

彬羽「幼虫には口があって桑の葉を食べて育つ
しかし 成虫になると口が無くなるんだ。

で、こいつらには羽はあっても飛ぶ力すらほぼ無い 卵を生んで一生を終える」

粋「Σええええええ」がーん。



皐月「もう情が移ったん?」

粋「だって なんか懐いてるように見えねえ?」

つつじ「んー。見ようによっては手にスリスリしとるような?」うーん。



彬羽「手遅れみたいだが 余り懐かせるのもかえって哀れだろ
そういう生き物である以上どうにもならねえ」




粋「Σあ。魄哉に頼んだらどうにかなんねえかな!」はっ

彬羽「木彫りのからくりに魂定着か?
それとも 死後に何か他の何かに憑依でもさせる気か?」


粋「・・どっちもちょっと。」引。


皐月「こう考えるとはっちゃん 悪の呪術師やな」

つつじ「あながち間違っとらんのが怖いなあ」




彬羽「そういう生き物である以上 外野がこねくり回すもんじゃねえ

そいつ自信がそれを望んでるなら別だがな」

粋「えー 虫にそれは無理だろ」


皐月「あーよしよし。凹んでもしゃーないやろ
懐かれとるなら ちゃーんと見送ったり」






つつじ「こらアカンな
あのお人は今日は仕事にならへんわ」苦笑い

彬羽「偉く身内に甘いな」

つつじ「精神年齢の低さ知っとるだけどす。

お子様並に割りきれへん人やからなあ。」





白「んで、 バカラ

質問。」

彬羽「ん?」

白「カイコって なんで口が無くなったんだ?」


彬羽「それは。諸説あるが
絹糸目当ての人間に養われる様になって 糸を吐いて繭になる行程を終えると 何故か物を食べなくなる

この辺りから 役目を終えると食料を消費しなくなり後世に譲る という説もあるな」

白「?

虫が 自分が飼われてる意味解って食べなくなるのか?」

彬羽「いや。そこまで知らん
カイコに聞け。」


白「んー。」むう



つつじ「なんや あんさんもどうにかして飼いたいん?
それともなんやかんやでお兄ちゃん心かいな?」



白「んー。何だろな


何か あいつ虫っぽく無いような?」うーん。


彬羽「Σ!!」





粋「Σうお!何だよカラス!!」びくっ

彬羽「ちょっとそいつ見せてみろ!!


だああ!やっぱりか!!」だだだだっ



皐月「ちょいあっきーどこ行くん!?」






つつじ「へ?なんや?」きょとん










間。











魄哉「あー。確かに この子妖怪混ざってますねえ。」びっくり

彬羽「やっぱりか。」ぜーぜー




つつじ「え?
まさかあんさん江戸城まで走ったん?」

彬羽「町中で羽出せるか?」

皐月「ごっつい体力やな ホンマ」うわあ。


白「今日涼しくて良かったな。」

彬羽「だな。夏場から生きてる自信がねえ

それよりだ。
虫なら仕立ねえと割りきれるが
こっちに近いものなら放置は出来ねえだろ。」汗拭いっ


粋「へ?んじゃこいつ生きれんの?」

魄哉「安心してください 大丈夫ですよ。
そもそも この子 生きたくて助けを求めて来たみたいですし」

皐月「うわー。そんなら粋が可愛えもん好きで良かったなあ」おおっ




つつじ「ん?そしたらカイコって皆妖怪混ざりなん?

そんなら絹糸に抵抗出てまうんやけんど。」うーん。

魄哉「んー。難しいお話ですが

さっき僕が持ってる養蚕の方覗いて来たんですよ

そしたらこの子みたいに 僅かなモノノケの気配はありませんでした。」

皐月「へ?んじゃこの子だけ化けたん?」




魄哉「いえ。化けたというか

彬羽君。 カイコが家畜化される前って知ってます?」


彬羽「いや。確か謎だろ

似た虫は居るが 性質も性格も色も全く違う
なぜカイコみたいな虫が出てきたのかは解って無いはずだ。」


魄哉「そこなんですよね。
それで考えたんですが

ほら。蒼月君って 正体蛇ですよね?」


皐月「ん?なんで蒼月?
蛇やな。うん」

魄哉「あの子みたいに 動物が妖怪化するのは珍しくありません。

また妖怪化すれば人と同等、もしくはそれ以上の頭脳を持つ事もしばしばあります。」

つつじ「ふむ。なんや小難しなりそうやな」ふむふむ



魄哉「んじゃ手っ取り早く結論行きますか


カイコ蛾は 一度妖怪に進化した虫であり
人の世話になる事で安定した暮らしを得る事を知り それに合わせて 変化した一族。
そして人に飼われる平和な日々で 身を守る必要も無くなり魔性を失くし 再びただの虫へと戻って行った


というのはいかがでしょう?」




皐月「・・めちゃ納得した。」ぽかーん。

魄哉「でしょう?

妖怪ならある程度変化は出来ますし
平和を望んだ結果。 子孫へ出来るだけの物は残す形で落ち着いた と見ればなんら不思議はありまけん」



粋「へ。へー 」冷や汗っ

つつじ「あんさん理解出来とる?」


彬羽「思考が高尚すぎて 理解できても同意出来ねえがな。」

白「食べれないの辛いよな」うんうん。




粋「なあ。んじゃコイツは何かの突然変異?」カイコ肩に乗っけ。

魄哉「めちゃ懐いてますね

恐らくですが先祖返りしたんでしょう。
それで頭が良くなり、自分の運命を知って生きたいと願った。
幸い生きる力も持って生まれたと言う辺りでしょうか」


皐月「下手すりゃアンタより賢いな」

粋「Σうっせえよ!!」




つつじ「んで、生きれる言うとったけど口無いのは変わらんやろ?
どないしてご飯食べさしますのん?」

魄哉「ああ。それなら

さっきから粋君が食われてます」


粋「Σはいいいい!?」




魄哉「大丈夫ですよ。
漏れてる生体エネルギー吸いとってるだけですから
ほら君 勾陣ですし。人の姿でもどうしても多少漏れてるんですよね

それとは別に懐かれてるようですが。」のほほん



粋「Σお前も食う前に言えよ!!」

皐月「口無いから言えんやろ」


粋「Σそういう事かよ!!」




白「な?だから 虫に見えないって」

彬羽「お前も始めからそう言え!」

白「どう説明していいか解らなかったし」むう。


つつじ「こっちはこっちでほんまボキャブラリーがあらへんな。」



粋「えーと。確認。
そんじゃコイツは生きれると?」

魄哉「ですね。」にこにこ

粋「んじゃその養蚕のなんちゃらって所に返さなくてもいいよな?」

魄哉「まあ。逃げた時点で普通は生きれませんし
そもそもこの子ならまた逃げますね」



粋「んじゃ 飼っていい?」ずいっ

魄哉「Σか、構いませんよっ」




粋「いよっしゃあああ!!!」おおおー!


皐月「良かったなー」わーい。






彬羽「自分の生体エネルギー吸うようなもの。飼いたがるか 普通」引。

つつじ「そもそも どこまで先祖返りしてるんか知らんけど 妖怪なんよな?」うーん。



白「あいつ。人型のメス以外には何でか人気あるからな。」むう

彬羽・つつじ「Σあのカイコメスか!!」




白「猫が襲わないようにしないと。

あ、喋れないなら筆談てので話さないとダメなのかな。」うーん。




つつじ「あのー。白はんの想像くらいまで進化したり
化けたりするようになる可能性ってのは?」

魄哉「ま、まあ無くは無いですね。」




皐月「あ。そんじゃ鶴の恩返しみたいに 人型になって嫁に来る可能性とかは?」

魄哉「Σな、無くはないですねっ」





一同「・・・・。」



白「義理の妹 虫かもか。

別に良いけど。」うん






粋「あれ?なんでそっち お通夜みたいになってんの?

おっ!飛んだ!!」おおおっ

カイコぱたぱた


一同「Σ進化はっやあっ!!」





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